第二話商社に伝説の職人が?
『総合商社のマンション事業』と聞いて皆さんはどんな印象を持たれるでしょうか?総合商社ならではの既成概念に捕らわれない発想で、日本のマンションづくりの歴史を切り拓いてきた住友商事。同社のマンション「クラッシィハウス」は、その多くが城南・城西エリアを中心とした成熟した住宅地に立地しており、マンションでありながら周囲の街並みに溶け込む上質な邸宅感を漂わせているのが特徴的です。そんな住友商事のマンションづくりの現場には、どのような視点やこだわりが息づいているのでしょうか。技術担当の小針さん、三輪さん、開発推進担当の松本さんの3人にお話を伺い、住友商事のものづくりの裏側を探りました。
住友商事のマンション開発は、用地の取得、開発計画、設計、販売、建物の引渡しまで、各工程を縦割りにするのではなく、少人数を核としたプロジェクトチームによる一貫体制が特徴的です。これにより、こだわりを貫きながらも、各工程の刻々と変化する場面においても、柔軟な対応を可能にしています。こうした柔軟さが求められる理由は、一棟一棟ではなく、一邸一邸を充実したものにしたいというブランドのDNAがあるためです。マンションのような大規模な建物であっても、最終的な評価が帰結するのは、ひとつの住戸の住み心地が良いかどうかに他なりません。だからこそ、大きな建物を区分けするのではなく、ひとつひとつの住宅を集合させたものとして発想するのが『クラッシィハウス』のスタイルです。したがって全50戸のマンションであれば、50邸の家を創ることになります。ひとつひとつを丹念につくるためには、分業制では満足のいく仕事はできない。これが住友商事の50年以上にも及ぶマンションづくりの中で出した答えです。
一つの答えに固執しない柔軟な住まいづくりへの姿勢は、品質管理にも生かされています。その一つが「秘伝の書」とも言える仕様書。住友商事が50年以上の歳月をかけて蓄積した住まいづくりのノウハウをまとめたものです。住友商事の住まいづくりに関わるスタッフにとってのバイブルですが、一見すると驚くほどスリムでコンパクト。理由は、ルールに縛られすぎず、物件ごとのポテンシャルを最大限に生かすものづくりを可能にするためなのだそうです。安全基準や改善点など基本はしっかり踏まえた上で、残りはチームの裁量に任せる部分が大きいのだとか。ターゲットに最も喜ばれる住まいを自由に追求できるため、デッドスペースを利用した収納や、プライバシーに配慮した間取りなど、細やかなこだわりを実現できます。すべての「クラッシィハウス」が唯一無二の個性を持ち、住まう方に寄り添う機能美を誇れるのは、そんな飽くなき探求があればこそといえるのでしょう。